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Answer

風が吹いていた。
少し追い風だった。

厚い雲に覆われた岬の先端が、
ワインディングの向こうに見えては隠れている。

それを、スロットルをひねる手で少しづつ手繰り寄せていく・・・。

無性に腹が立っていた。 

大人はいつも言った。
「答えなんてないんだよ、坊主」

坊主呼ばわりされたことに腹が立っているのではないことだけは、わかっていた。



シールドにわずかに雨粒が当たった。
心の中で小さく舌打ちをした。

しかし、どちらにしても引き返すつもりはなかった。



ある日、気が付いた。

答えなど、どこにもないこと。
答えがないと思えてしまう、自分になったこと。

気が付けば、ヘルメットをかぶり
キックペダルを踏みおろしていた。

そして、岬に向けシングルのエンジンを思いきり吹かし、
クラッチをつないだ。





雨は、止んだ。



岬の駐車場は、がらんとして木の葉が舞っていた。
サイドスタンドに車体をあずけ、灯台まで少し歩いた。

はるか彼方では、黒い雲の隙間から光が漏れ、
白波の立つ海を照らしていた。

この雲もいつかは切れて、晴れ間になるだろう。
誰にだって、公平に夜は訪れるし、朝はやってくる。
世の中はいずれにせよ、そんなことの繰り返しだ。

そう思ってしまえば、少し気が楽になるように感じた。 


駐車場まで帰ってきたとき、突然一台の車が滑り込んできた。
「地平線」という名のその車は、とても40年近くも前のものとは思えないほど、きれいに 手入れされていた。
おそらく、ホイールとマフラー以外はデフォルトのままであろうことが伺えた。

理想的な状態だ。


横目にみながら、ヘルメットを被りキーを差込み、
キックペダルを踏みおろす瞬間だった。

聞き覚えのある歌が気こえた。

「地平線」の開け放たれた窓からだった。


そうか。そうだったんだ。

昔、ヤツが歌ってた。
「答えはある」って。



笑い出したい衝動に駆られながら、
スロットルをひねり、駐車場をあとにした。

ヘルメットの中でその唄を口ずさみながら、
もときた道を引き返す。
忘れていた歌詞も、少しづつ思い出してきた。

唄にあわせリズミカルにスロットルを操作しながら、
丁寧にコーナーをクリアしていく。



どこまでも走っていけそうな気分だった。
いや、走らなくてはいけなかった。

少し晴れ間が出てきた。


またしばらくは、がんばれそうだった。






風が吹いていた。









※この物語はフィクションであり、登場する人物・地名・団体名はすべて架空のものです。

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コメント

こちらでははじめまして!
今週に入ってずっと朝帰りだったのでPC立ち上げる時間がなく、レス遅くなりすんません。(^^;

いいですね~、ボブディランの「風に吹かれて」。ブログ最初の2つから、「How many roads・・・」などと口ずさみながら読み入ってしまいましたよ。^^
自分も「On the Road」を書き始めた頃を思い出しました。

これからもちょくちょくお邪魔しますので、またよろしくです。

投稿: けん | 2007年9月13日 (木) 00時16分

コメント、ありがとうございます!!

お忙しそうですね。
朝帰りですか。
私の「残業三昧」などまだまだ甘いものですね。
あまり無理をされないように。。。

Fictionカテゴリーは、完全に私の頭の中の妄想の捌け口となってます。
でも、たま~にこんなの書くのって何か好きなんですよね。
お付き合いくださって、ありがとうございます。

また寄ってってくださいね。

けんさんのツーレポ更新も期待してます。
かな~り「行った気」にさせてもらえますので。。。(笑

投稿: エリミ | 2007年9月13日 (木) 00時40分

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